眠れない夜に4
ゴングを鳴らすのはいつも私だ。
口舌永久格闘技戦。
チーン。
夫の退職後、私の我慢のコップの水はたやすく溢れる。
黙っていればいいものを、これで二日三日のダンマリ地獄の扉が開くことがわかっていながら、私は自室でひとり作り上げた怒り玉を手にがっと襖を開ける。
「!」✖️「!」「!!」✖️「!!」
詳細略。
イーブンか。
不毛である。私が夫にないものねだりをしているのはわかっている。人は変われない。歳をとって性格は揺るぎないものとなって立ちはだかり、敵は鉄壁の構えだ。
だいたいね、声の大きさが違う。
まあ怒り玉には結構唐辛子とか入れてタバスコなんかもかけちゃっいましたよ。
でも硬めに握って小さくしたんだけどな。ホイと投げたらど真ん中だったらしく、何、そのでっかい声は。威嚇?
聞こえてますけどー。
どこかにスイッチあります?
私、そんな声で応戦される程の技かけてませんけどー。
不毛である。実に不毛だ。あとどれくらいの老後だと思ってるの?明日潰えるかも知れない時間なのに。(それはこっちの台詞だという声が聞こえるようだ。自主格闘技戦にもつれ込み)
「その一言、取り消せよな」を我慢できずに60を越えてまだこの人の優しさを知っているからこそ(これホント。わかってよ、って言ってるだけなのに)礫を投げてしまう性懲りの無さ。我ながらいやになる。自分の小ささに辟易しながら明日、いや今日の作戦を立てています。あ、立ててない。
寝る!