ゆうひ
「最果て」と言う言葉が浮かんでくる。秋田県男鹿半島入道崎。
ゴーゴーという風と波の音。もうじき大きな夕日が目の前の荒涼とした海に静かに沈んでいくのだろう。私は草原に身を横たえて目をつむった。
あの海に行きたい。もう私にはあの広大な草原を歩く脚力はなく泣き言を言わずに車で運ばれる体力もないのだけれど。
宿の海に面した天井までのガラス窓、その前に立ち、溶けたガラス球のような大きな大きな太陽が沈んでいくのを旅人たちは言葉もなく見つめていた。
人生の終わりに、沈む夕日を一緒に眺めてくれる友がいれば他に何も欲しいものはないとさだまさしが歌っている。
私の隣には夫がいた。けれど私の視線も夫のそれも交わる事はなく、姿を消そうとしている太陽を見つめている。私たちは二人でここに来たけれどそれぞれが一人であることをしみじみとかみしめていた。
男鹿半島入道崎。風の岬にもう一度立ちたい。