今日から

日々を綴る

再会したときのこと

50歳の時の同窓会ですれ違いざま、笑顔で名前を呼んで声を掛けてくれた。それがなければ、高校時代同じクラスではあったけれど殆ど話したこともないQ君に歯の治療の相談をしようとは思わなかっただろう。

営利に傾かない診断を得る為にセカンドオピニオンを取りたいと思った。


果たして当日、倒された椅子に座って待っていた私の後ろから高校時代、50歳の

変わらない穏やかな声がした。


「こんなになっちゃいました。

髪も薄くなったし。」

見ると同窓会からの15年は彼を白髪に変えており、反射的に「いえ、私もすっかりおばあちゃんです。」と返した私もグレイヘアの紛うことなき老女である。


私の為に長い時間を確保していてくれたのだろう。歯を見ながら、細かく状況を説明してくれながら、同級生達の話をする。今も交流があるという懐かしい名前は4人。


苦学して大企業に入った◯君のこと、奥様を亡くされて三年間引き篭もった◯君のこと、同じく数年前に奥様を看取って寂しいと話している◯くんのこと。

私は残念ながらカバ状態で、うー、とかハイしか言えない。


「男は弱いよね。」

そうQ君は呟いた。

そういえば何故か夫が残されるという話が私の周りには多い。


「女は強い?」から妻が夫を看取るのが順番としてはいいのかもしれない。しかし、何事も思うようには行かない。人の人生の閉じ方などその最たるものだろう。

各々に与えられた線分を生き切ること、それだけ。歳を重ねて、フラットな表情が微笑みになっている人がいる。

Q君のように。


間に合うだろうか。この私も。