敵は己れ
「遂にこんな時が来た」ような気がしないでもない。
「会いたい人に会っておこう」
「やりたいことはやっておこう」
「しなければならないことをしよう」
身体さえ動けば全てでなくても、八割くらいはできるような気がしていた。
ところが五割程度に届くか届かないか、まさに道半ばにして行くてを阻んだ敵は、「もういいわ」と肩を竦め、逆はの字に手のひらを広げる自分だった。
一緒に買いに行った時の母の笑顔を忘れた訳ではないけれど、「役目を終えたと思ってね」と湧き上がる思いを無理矢理押しやって、婚礼箪笥、雛人形を捨てた。
場所を取り誰も弾かない楽器類、20年以上毎日書き続けた日記、子供達にせっせと作った洋服も棄てた。(日記は直近10年のものは保管しておいて正解。障害基礎年金申請の助けになった)
旅行は会っておきたい人に会う旅も兼ねたこともあり、そうする中で神様の悪戯かというような再会もあった。
ついこの間までこの「時間が足りない」行進曲はまだ続くものだと思っていた。
よく大腿骨骨折をきっかけに寝たきりになるということを聞いていたが、プチ「気持ちが寝たきり状態」に近づきつつある。
肩の怪我を機に。
友人とランチに行けない。
旅行もキャンセル。
重い物が持ち上げられないから片付けが出来ない。
「行けない」「出来ない」が私の前に立ちはだかる。
ジワジワと気持ちが老いていく。
いかん、いかん、と黒ニンニクを食べる。
ムダに鼻がいい夫が「くさっ!」。言われて部屋に置いた大型の消臭剤、効いてるみたいですけどね。