ワクチン後2週間したら行きます。
脳の手術は全剃毛だと聞いて、ツルツルの状態から生え始めて来たらもう染めないと決めていた。
何とか生え揃った頃、体重は今より10キロも少なかったので、坊主頭は思っていたより肉の削げた顔に似合ったし、洗ったままで済むという楽さ加減に、
「これこれ。これが目指していたところ!」とほくそ笑んだものだ。
けれどその時期は少しの間で、術後4年を過ぎた今、「あぁ、美容院にいかなくちゃなぁ」と鏡を見つめている。
想定外に白寄りではなく黒寄りグラデーションのグレイの髪色になった。「とにかく短く」と言う注文に、いや正確に言うと毎回ああしてくれこうしてくれと好き勝手を言う客に、美容師さんは笑って応えてくれる。
前回はモヒカンのようにワックスで立てるか、ベリーショートのオールバックと座るなり言ってみたら速攻却下された。
髪質的に無理です。夏木マリならできます。との事だった。
「夏木マリ?!」
「無理!」今度はこっちの番だ。
腕の良い美容師さんである。無理と言いながらバカ話に笑いこけながら、当初の希望に沿おうと努力してくれたらしいかった。
出来上がったヘアスタイルはワックスでかきあげれば、ほぼドライヤーでのスタイリングが要らないと言う楽な形で、満足した。
ところが今回は本当に悩んでいる。グレイにするとメイクは欠かせない。すっぴんにグレイはほぼ山姥。
若い頃から毎日のメイクは習慣だったが、ここにきてそれが面倒になってきた。朝起きて鏡を見るとため息をつく。起き抜けの体は強張ってガチガチで痛む。どこにも出かけないし誰にも会わないしもういいかと思う。
太ってもきた。ベリーショートがまだ似合うのだろうか。美容室の椅子に座り続けるのもきつくなってきた。いっそこのまま伸ばし続けてまとめ髪に?
いやそれはいかに細くなったいえど乾かす面倒から逃れられなくなる。
そう、私はとにかく面倒が嫌なのだ。う~、どうすれば!
あ、そうだと思い出した。
昨日半世紀以上の付き合いの古い友人から一人暮らしをすると決めた高齢者マンションが何とか片付いたから遊びに来てと連絡があったのだった。
きれいにしていかなくちゃ。やっと手にしたモチベーション。いざ美容院へ。またまた単純な私。