5と67
身長110センチと182センチがあぐらをかいて向き合っている。
間には将棋盤。
六億手先を読む天才、藤井聡太さんのニュースが流れるたびに、夫はその快挙は勿論だが彼の高校生らしからぬ謙虚なことばに感じ入ることしきり。もううっとりと言ってもいいほどだ。
私はこの歳になって将棋って何?という恐しい無知からどれどれと首を突っ込んだ。悲しいかな、金と銀の動きをなかなか覚えられない。そのレベル。とほほ。
将棋は始めると長い長い。ダメだコリャと早々に脱落し、アプリに9マス将棋なんていうのを入れてチョコチョコ遊んでいます。そのレベル。
で藤井君大好きな夫は、孫と将棋を指したいと思い始めて道具を新たに、待ち構えていた。
果たして、何故か「ただ全速力で走り回る」のが好きな孫はそれに食いついて来た。そして一昨日、夫満面のしめしめニコニコ顔での初対戦となった。
複雑なルールは飛ばし、王様守れから始まって、おばあちゃんは横で駒の動かし方をちょいちょい指南。おじいちゃんは中盤から容赦無く王手王手って。
孫が呟いた。「負けるかも」。
ってあなた67に勝つつもりだったの?
5が?初めてで?
「これはどっちに行けるの?」
と聞いてくる孫に、「えーとね」と教えながら「それよりあの駒動かした方が」を言わないようにする。
負けてしおしおとベソをかく孫と、嬉しそうな夫。以前買ってあった9マス将棋を持ち帰らせたが、それで帰宅したパパに負けて、また泣いたそうな。
あ、忘れていました。意外にもかなりの負けず嫌いであることが判明した孫に、最後の「負けました」というのを教えなければ。
あの素晴らしい精神を理解するのは、王手打たれてメソメソのずっと先でしょうけどね。