今日から

日々を綴る

「時代」

中島みゆきがギターを抱えて舞台に立ち、「時代」というこの名曲を歌ったのはいつだっただろうか。

ヤマハ・ポプコンの舞台にジージャンを着てにこやかに現れた中島みゆきは、迫力のあるアルトでこの歌を歌い上げた。


初めて聴いたその時から40年近い年月が流れた。

 今はこんなに悲しくて涙も枯れ果てて

 もう二度と笑顔にはなれそうもないけ ど

 そんな時代もあったねといつか笑って 話せるわ

 

 まわるまわるよ時代はまわる

 喜びかなしみくりかえし


何という老成、何という才能。

20代の中島みゆきはあの若さで人生の「時代」を看破し、他の歌手を圧倒してグランプリを獲った。


私の40年の人生もまた、振り返ってみればちっぽけではあるが喜びと悲しみを繰り返し、時に自分を見失い、時に喜びの涙に暮れて、気づいたらあんな時代もそんな時代も終わっていた。


こんなこともあるわよ、と清々しく風に吹かれることなどという時代があっただろうか。いつもいっぱいいっぱいで。


60の峠を越えて、この歌を口ずさむとこみ上げて来るものがある。

ちょっとだけどね。

だってやり直せないし、なんかどっかでコーナーまちがっちゃったかなあって思うけど、ま、こんなもんだわ。

私の「時代」は。

眠れない夜に3

今日も今日とて就寝後きっかり二時間で目が覚めた。どうなってるの、私の脳。一番がっかりするのが目が覚めて枕元の時計を見たら、まだ「今日」だった時。朝まで長いわー。

でも、と開き直ってこの何をしてもいい空間でこの貴重な時間を再び睡魔、魔はないかな、眠りの妖精が訪れるまで遊ぶことにしている。

遊びをせむとや生まれけむ ですもの。

明日何が起こるか分からないから。


書いていることが多分一番好きなのだろう。多分。でも言葉が伝えることの限界は知っている。今選んだこの言葉が、この文が、打ち込んで私から離れた時、どう伝わるか考えると書けなくなるから、思い切り鈍感になって遊ぼうと思う。ここでは。と勝手なことを考えながらスマホいじっています。


9月の末に転倒して肩腱板を損傷した。

腱板という筋肉はレントゲンに映らないからどうなっているのか正確にはわからないけれど、恐らく伸びてしまったのだろう、もしかして切れて(断裂?)しまっているかもしれないけど、と病院で言われた。右腕をある方向に動かすと、「ううう」もしくは「ゔゔゔ」と唸るほど痛い。


あの一瞬、「やってしまった」という一瞬の出来事で計画していた温泉旅行がキャンセルになり(って、JAFから40年入っていたからお安く泊まれますよというパンフレットが届いたので、ここに来て急に締まりや屋になった夫が行こうよ、と言い出した一泊旅行であって、潰れても大したがっかり感は無いけど)、夫をまた私の病院通いの為に振り回すことになってしまった。

それが申し訳なくてたまらない。今月はあと16回、5箇所の病院と整骨院に。

ごめんなさい、ありがとう、お父さん。

心の中で手を合わせています。


って、本心なんだけど、夫は明治の男のように寡黙で真面目で堅物でありまして、そんな私の可愛らしい殊勝な謙虚な思いなど跳ね返すような愛想のない顔で。


ごめんなさいね、お父さん。

気にするな、当たり前だろう、夫婦なんだから、と言いつつ優しくハグ。

ないなー、ないないないないない。


おっかしいなあ。

机並べてた頃は、もっと柔らかい人だったのに。いつからそんなに任務遂行!って風情で家事をこなし、(そんなにきちんとタオル畳まなくてもいいのよ)、カレンダーに書き込まれた予定をきっちり頭に入れて、医師の言葉を後ろでメモって質問も忘れない優秀な秘書みたいになっちゃったの?

あ、私か!そうさせてるの。


あー、旅に出たい。夫の顔が柔らかくなるから。早く治さなくちゃ。この肩。今日はホットミルクで妖精待ちます。

雨冠に月

父方の曽祖母の名前が雨冠に月と書いて「よう」だと知ったのは数年前のこと。今はもう使われていない漢字で、意味は「おおぞら」。

東北の寒村で、嫁いで祖父を産み、結核で離縁されて実家に戻り間もなく亡くなった。連れ合いだった曽祖父も後を追うように亡くなり、祖父は一人っ子で家系を繋いだ。

ようは、離縁されたのが20歳。戸籍ではそこまでしか辿れない。その後のことは叔母から教えてもらったこと。

祖父は1歳だった。


叔母からは「よい」という名だったと聞いていた。だから宵って随分哀しげな名前だなあとその運命と重ね合わせていたけれど、従姉妹が祖父が遺していた山の相続放棄の件で駆け回り、ひと段落して送って来た書類から正しい名前が分かった。

「よう」の字義を知り、気持ちがぱあっと晴れた。


素敵な名前を付けてもらっていたのね、

ようさん。

私と同じ誕生日の、薄幸のひと。