今日から

日々を綴る

小さな薬局で

170センチ、44~5キロくらいだろうか。

痩せて(細い!)化粧っ気のない若い母親は、胸に小さな赤ちゃんを抱いている。

残暑に加えてマスクに赤ちゃんと来てはどんなに暑いことだろう。おまけに

長袖の黒いニットカーディガンにくるぶしまでのトロンとしたスカートという服装では。


ごめんなさい。空をぼんやり見ている体であなたのこと見てました。


小さな命を守る、寝る間もなく、自分の食事もままならなくてなりふり構わず育てる毎日なのだろう。私はその人に我が娘の姿を重ねていた。


その女性と皮膚科の処方薬局で居合わせた。夏は赤ちゃんの湿疹との闘い。その人もたくさんも軟膏をバッグに詰め込んだ。


ちらりとカウンターの上のスプレー式消毒液に目をやり、そしてバッグから手持ちのスプレーを出してクルクルと掌に擦りつけた。


と、そのキャップが落ちて転がり、私の足元で止まった。私は反射的に手を伸ばし、直後引っ込めた。

「触らない方がいい?」という言葉が口をついて出た。母親はにっこりと(マスクで隠れているから目だけ)微笑み、キャップを拾ってドアを押し、「ありがとうございました」と小さく言いながら頭を下げて薬局を出て行った。


マスクで人の表情が分からない。普通の行為が迷惑だったりするかもしれない。

街では人と人がパーテーションで仕切られ、マスクなしでのスーパーでの買い物などあり得ない?世の中。


先日夫がマスクを忘れてスーパーに行ってしまい、周りに「なあに、この人」という目で見られちゃったと帰宅するや否やの報告。

私の倍も神経質で非常識を疎む人間が、疎まれる側になって内心悔しがってる。

ハンカチ使うなりすればいいのに、まったく。


使い捨てのゴム手袋をして品物を触っている人もいる。

電話でのお喋りのなかに、「町内で陽性患者が出てるって」という誰とは名指ししないじんわりとイヤな感じの噂話が入って来る。


ああ、人が群れてガチャガチャしていた

あの空気感が懐かしい。

なんて、疎にあれば密が恋しい無い物ねだり。我慢我慢。