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爆裂視聴「天皇の料理番」

一昨日から昨日にかけて「天皇の料理番」というドラマを十二話ぶっ通しで観た。久々に泣いた。

こんな風に時間を使うことが出来るのはなんと幸福なことだろう。


歳を取って多くのことを経験し、その度に蓄積して来た様々な感情(悔やむことが大半ではあるが)は、厚い層になって私の中にある。その層に、このドラマが醸成したものが雨水の如く沁み込んで行くのを感じた。


キャストが良い。

主人公の兄役の鈴木亮平。

弁護士を志しながら肺結核に倒れる優しい兄の顔がどんどん病人そのものになっていき、肩や背中が薄くなって行くのには心底驚いた。痩せ衰え、己の運命を呪いながら弟に夢を託す限りない優しさ、微笑み。


役に俳優がぴたりとはまっている。


厳しく深い優しさで主人公を鍛えるシェフ小林薫の苦さ、怒り、小さく微笑む表情。男は歯を出して笑わないんだなあ。


その繋がりで言えば、同じくシェフであるが、職場は小林薫と違う英国大使館付の加藤昌也のスマートこの上ない後ろ姿。年齢を重ね、どんどん素敵になっている。


高岡早紀はこの人以外考えられない役どころ。なんて綺麗なのだろう。綺麗なだけでなく、数年を経た時の顔は明らかにストイックな役作りの結果と見た。


その夫が佐藤蛾次郎。大丈夫か?という風情ながら役者魂光る見事な滑舌。


主人公の父の怒り、悲しみ、苦悩、優しさは余す所なく杉本哲太が、まん丸い優しさを美保純が演じている。


元同僚、柄本佑、桐谷健太の弱さと善良。

脇の役者の素晴らしさよ。

もう「よ」と言いたくなる。ホント。


主人公二人は健気である。大変な努力で臨んだだろう。佐藤健さん、姿勢が気になりました。黒木華さん、あひる口というのでしょうか、同じく気になります。広末涼子ほどではなく、これくらいはあひる口とは言わないのだろうか。


力がなくては演じられないでしょう。重箱の隅突きではなく、うーん、なんだろう。この感じ。表現し辛い今一つ感。

泣かされたのは確かなのだが。


ともあれ、しっかりした原作のあるものは大概が実写化、ドラマ化、映画化では行間の表現が出来ないからかコケて、ガッカリばかりだった。本作は杉森久英原作。高校生の頃、啄木に関する著書を読んだきりだが、きっと原作を壊してはいないだろう。


キャストの素晴らしさで長々と勝手な感想を書いてしまった。瞼が落ちて来た老人、撤退です。