母ちゃん
義妹とLINEで話をしているうちに、連れ合いの呼称(含家族内及び外での呼びかけ)に話題が移っていった。
以前からちょっと気になってはいた。一昨年だったか弟の家に行った時、弟が義妹を「母ちゃん」と呼んだように聞こえたので。
「もしかして母ちゃんなの?」
「はい、子供が生まれてから32年母ちゃんです。」
迂闊だった。
って何が迂闊なんだか。
いや、とにかくちょっと驚いたのだ。
「え?外でも?」
「はい、もう慣れました。」
義妹は服のセンスといい、物を選ぶセンスといい、私はいつも感心し、その背筋の伸びた生き方に学ぶ所大である。
母ちゃんという音が持つ響きは嫌いではない。あったかくて素朴で、飾らない笑顔がくしゃっとしている女性のイメージ?しかし義妹のおしゃれカジュアルを上手く着こなしている雰囲気には合わない気がする。
そして外で呼ぶのはどうなの?弟よ。
私はごめん、ちょっとパス。
ってひとんちのこと言えないけれど。
うちは「母さん」だけど、「や」をつけるのだ。
波平さん。
サザエさんの。
事故で入院した時、気が緩んだか看護師さんの前でそれをやっちまい、看護師さんが吹き出した。
「母ちゃん」がその家のスタンダードなら車は急に止まれない。急ブレーキ踏んで深呼吸して「お母さん」なんて無理。
話は飛んで「渡る世間~」。
あのドラマではもう石に齧り付くようにどの夫婦も下の名前で呼んび合っていた。
ピン子がさつきで、角野卓造じゃねーよがイサムだったか、忘れたけど。
合わない、顔と。
いえ、全体的な雰囲気と。
あれに比べれば父ちゃん母ちゃんは、仲のいい夫婦が40年近い生活の中で培って来た空気感そのもの、自然体の言葉なんだろうなあとひとりごちた次第。
でもね、弟よ、私達は確かに老いた。しかしハートはあまり変わっていないことに自身で驚くこともあるのだ。
それが証拠に、LINEの最後に義妹はこう書いていたのだから。
「でも下の名前で呼ばれてる人、いいなあ」って。