今日から

日々を綴る

彼方へ

恩讐の彼方に


そんな言葉が浮かんできました。丑三つ時にいつものように目が覚めて、ふと蝋燭の炎が見たくなりました。

数日前、思いもかけない訃報を受けて。

人の一生を思い、安らかであれと祈りながら蝋燭の火を見つめていました。


一本の蝋燭の火に照らされた闇の中のすっぴん老婆の面は、これから呪いでもかけようとする魔女に近いものがあったかと思われます。


が、しかしこの身に心に邪念はありませぬ。蝋燭は、蜜蝋の溶け出す甘い香りを、朝日と同じ色で時に小さく揺らぎながら驚くほどに強い熱を放散しています。


その小さな炎を見つめながら、突然この世を去った人のことを、笑顔を、同病の痛みを、孤独を思い悼みました。


もう数時間すれば、この小さな炎の親玉のような太陽が昇る。私は最近起きると庭に出て、朝日は脳をリセットしてくれるというのを愚直に信じ、その何万ルクスだかの強い光を浴びて深呼吸します。


頭を空っぽにして枯芝を踏む。

恩恵、恩寵。空の高みから降ってくるものの温かさ。私の中の原始に届く気がします。(なんてちょっと読み始めた脳の本の影響。すぐ侵食される。)


一人、誰にも知られずこの世を去った人が、恩讐を超えて今、あの光の中にいますように。


Aちゃん、子供の頃の可愛い笑顔が思い出されます。従兄弟。冷え切った家族を捨てて孤独を決め、生きたひと。