今日から

日々を綴る

黙っとき!

三つ子の魂という言葉を先日、娘について使った。

昨日、片付けをしていたらずっと以前に小学校からの通信簿を纏めたファイルが出て来た。

通信欄を読んだ。まとめる時にも、またその前後にも何度か読んでいる。


小学校を三回変わった。

どこの先生も「温厚だが積極性に欠ける」と書いてある。

今もそんなものだ。争い事は嫌い。人前に出るのが嫌い。


しかし、これに「ほんとはね」と付け足さなければならないかもしれない。

だって、温厚だけで渡れるほど世間は甘くないですもの。


ということを思い知らされた出来事がある。初めての転校で関西の小学校に入った。ベッドタウンで転校生は多いのだが、中途半端な時期でその時の転入は私一人だった。


転校生は物珍しい。こてこての大阪弁が珍しくて面白いのはこちらの方なのだが、果たして私は紹介が済んだ後の遊び時間、ぐるりと女の子達に囲まれた。


色んなことを聞かれたような気がする。

一番近づいて一番強い口調で、話しかけて来た子が、凄まじい口調で隣にいる子を遮った。


「アンタは黙っとき!!」


瞬間、言われたちょっと太めの小五にしてもう若干の貫禄が感じられる気の良さそうな女の子の目にプツンと涙が浮かんだ。


その時だった。突くとプリンと羊羹が出てくるお菓子のように、私の中で何かが弾けたのは。なんと言ってその暴言に対して逆らったかは覚えていない。

覚えているのはそれから間もないある日の学校行事、「草むしり大会」でクラス全員から無視されたことである。そんな扱いがその日以降どれくらい続いたかも覚えていない。私が理不尽さに猛烈に腹を立てて庇った筈の子も背を向けた。


辛かった。ただ「私は間違っていない」という気持ちはブレなかったように思う。


次にある記憶は、この困った事態をどう打開しようかと考えている私である。転校生は必ず私と同じ目に合う。いじめっ子のボスは、私程に逆らわなくともよく回る口と毒で人をやっつけるのが好きなのだ。

転校生を仲間にしよう!

斯くして次々転入して来たそして速攻ボスの洗礼を受けた気の良い三人に声をかけ、私達はいつも四人で行動した。


私は、この五年生の時の経験で自分の身を守るのは自分、方法はある。しかし、あの時黙って暫く様子を見るという方法もあったなあ、と世間を渡る上でのもう一つの方法、「長い物には巻かれろ」というものがあるということを身をもって知ったような気がする。


温厚だけではない曲者?

ある意味策士?

いや悪事は働きませんが、私という人間の原型を自分が意識したという経験になったことは確かです。


そうして、良くも悪くも様々身につけていまがあるという斬鬼に満ちた65年というところでしょうか。